2012年6月8日金曜日

東京百景32「宝町の階段」

2006年から2007年にかけての話であるが、前職の眼鏡店の支店が宝町にある。都営浅草線の宝町の駅が最寄りということだが、支店名は「銀座東」である。店長のFはとにかく若いながら優秀な店長で……まあ、彼は何をやっても成功するだろう。まあそれは良いとして……。

当時江東区の森下から、馬喰横山で都営新宿線から都営浅草線に乗り換えて通ったわけだが、宝町の改札を抜け、地上まで登りゆく階段の長さは尋常ではない。
まだ心臓手術する前は、これを一気に登る事は不可能だった。心臓に異常が見つかるまでは年のせいだと思っていた。

45歳だし……タバコも吸うし、しかたないのだ、と。

登りきった時は、酸素ボンベが必要かと思うほど苦しいのに、酸素ではなくニコチンとタールを補充してしまうのだ。それでもタバコはおいしかった。

心臓手術を終えて、久しぶりに銀座東店に顔を出した時、この階段を普通に登る事が出来た。そこで改めて、心臓が悪かったと思った。

店長のFにその話をすると……
「僕は毎日走ってあがってきます!」

〜そりゃあ、あんたは30だよ。若いよ〜と心は呟いたが、口から出たのは変な笑いだった。
「はははは」

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