2012年7月15日日曜日

東京百景37「新宿世界堂」


1987年、7月7日。七夕の夜。世界堂脇の小さなスナックで送別会の宴が開かれた。主役はこの私であった。

主役は気持ちいいほど酔っぱらっていた。因幡晃の「別涙(わかれ)」と山口百恵の「いい日旅立ち」を熱唱した。

1986年の暮れ、知人の紹介で、世界堂でアルバイトを始めた。次の人生を模索していただ。世界堂は数年後火事で近代的ビルに生まれ変わるが、私がいた頃は古いままの、なんだかからくり屋敷のような面白い建物だった。

表に出る事はなく裏方として、額に入れるガラスを切ったり、数店の支店へ発送する荷物を揃え集めたり、トラックの運転手に同伴して、工場からキャンバスを運んだり、世田谷の倉庫へ仕舞いにいったり……意外な支店は横須賀の基地の中だったが一度だけ同伴した。

ここでの生活は楽しかったが、アルバイトだけに収入の面で厳しかった。また失恋もあったりして、それをバネにここを旅立つ決意をする。就活が実り、7月9日に某眼鏡店入社となり、その二日前に辞めることとなった。

アルバイト仲間と社員さん数名で小さな送別会を催してくれたのだった。

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