2011年11月25日金曜日

東京百景19「武蔵境線路沿いテニスコート」

1990年頃の話である。

 30歳という大台が迫ってきていた。1987年に入社した職場では、ステップアップして中堅になっていた。そして管理職、つまり店長を目指すにはもう一踏ん張りであった。好きで独身を貫いてきたわけではないが、ここらで身を固めなければと思ったのだろう。

 とにかく今までと縁遠かった屋外スポーツに精を出し始めたのは、そんな理由ではなかったか。今までは音楽とか読書とかインドア派を突っ走ってきたが、そんな事では出会いがないのは当たり前とでも思ったか、取りあえず自分改革に取り組んでいた。

 その一環で、社内で先輩が起ち上げたテニス同好会に真っ先に参加したというわけだった。週1回の活動だったが、仕事を終えて行きつけとなっている武蔵境のテニスコートに向かう。駅の北口を出て線路に沿って、三鷹方面に向かっていくと鬱蒼とした林の中にテニスコートがあって、そこはJR線路の脇なので、電車からは丸見えだった。

 2時間ほど汗を流して、終わってから皆で食事……というか飲み。さすがサラリーマンである。これが直接は婚活に結びつくわけはなかったが、内面的に自分を磨く努力だったんであろう。

 結局30歳の誕生日を向かえるまで婚活は続き、ターゲットは数人いたが絞れず、二兎追う物は……の鉄則通り、ターゲットには総スカンを食らった。30歳の自分へのご褒美に引越を敢行した。新築ワンルームは、初めてのエアコン付きで、バストイレ別のフローリングで、これもまた婚活の一環と言えなくもない。

 ちなみにこの武蔵境のテニスコートは、グーグルマップで見る限り、なくなっているようだ。

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